070901

当時の状況を思い返してみると今とぜんぜん違っていて、もちろん記憶だから曖昧になっていたり美化されていたりはするのだけど、それにしたって14年以上も前なのでいろんなものがあったりなかったりする。あくまで自分に限った前提条件をいうと①TVシリーズ・劇場版は見ていた(REBIRTHは未見)②漫画版は最新巻まで追いついていた(9巻か10巻だと想う)③フィルムブックは後から出た三分冊のものは持っていた、というのが大まかなところ。ただこれは若いうちにインターネットやっちゃった弊害だと思うんですが、なんというか、作品自体に“物心付く前にものすごい影響を生んだけどそのまま燃え尽きたカルトな作品”というイメージがあったんですね。それ自体は02年~06年位までのイメージとしては当たらずとも遠からずだったとは思いたいんですが、そこでこうなんというか、90年代に対する変な憧憬と神格化みたいなのがあったというか。感想とか書いてあるサイトを漁ってしまったせいで変にリアルタイム世代の擦れ方を模倣しちゃったところがあって、新劇場版がなかったら確実にもっとよくない方向に行ってた気がします。作品の持っている暗い部分やそれにまつわる表現とかは深く届いたのだけど、実のところそれが刺さったのって俺の場合すごく簡単で中学受験があったからなんですね。他の家庭のことは知らないので自分のことになりますが、これこれこういう理由で中学受験するねという説明をされた記憶がなく、いつの間にか塾に行くことが決まっていて、嫌だというと怒られてどうするの?やめるの?と明らかにやめてはいけない前提でこっちに選択権を無理やり委譲されてやめませんと言わされるというのが俺の中学受験でした。こういう中学受験のさせ方をすると碇シンジに鬼シンパシーを感じて受験期にエバンゲリオンを心の支えにしてしまう12歳になります。

だから受験終わって中学校に入って一段落してたし、ちょっと前に流行ったマニアックな作品が好きだぜみたいなキモい自意識もあったりしつつ、そんなだからもう一回やるよとなった時にこれは自分たちの世代のものだなんて気持ちもあったりしました。振り返ってみると別に世代のものもクソもなくて、自分が出会った時がその作品との時間の始まりだし、一人で向き合う全てで自分のものであり自分だけのものでない作品との関係を築くことに比べれば世代とかどうでもいいんですが、そこは子供の思い上がりとして扱ってください。とにかくそういう状況で新劇場版が始まったのが2007年の9月になります。

正確に言うと見たのは公開日ではないので記事のタイトルは嘘なんですが、なぜかというと当時所属していたのが文化部で文化祭前が一番忙しい時期だったんですね。だからなんとな~く文化祭終わるまでは映画とか行く時間ないやろみたいな雰囲気があって、たぶんそれは勝手に内面化してただけで今思うと2週間前に90分前後他のことやってたら間に合わないものってもうその時点でどうやったって間に合わないからどのみち行ったほうが良かったんですが。で、見に行けたのは結局文化祭が終わった九月中旬でした。先輩と同期と一緒に行って、パンフが売り切れたかなんだかで先輩に貸したような記憶がありますがだいぶあやふや。でも映像がすごくて、今の技術でやるとこれだけ新しくなるんだという感動はありました。最後のカヲルくんも最高だったし。

内容にについては当時そこまではきちんと受け取れてなかったというか、実際第六話までのダイジェストの風味が強いのでTVシリーズを見てると映像面に関心がいっちゃう感じはあります。全体的に前向きになった、くらいのことはもちろん感じていたと思うんですが。その前向きを誰が担っていたかというとやっぱりミサトさんで、序は明確にミサトさんの話をしてます。一緒にドグマに連れて行くところとかかなりおおー、となるんですが(死ぬのが怖い死ぬような場所に向かわされるのが怖いと言う子にむかってみんななんかあったら死ぬつもりでやってるしひとりじゃないしがんばってねはちょっとゴリ押しすぎるけど葛城ミサトはそういう人間)、シンジとミサトの関係をヤシマ作戦まで引っ張った結果トウジとケンスケのいいところがざっくり削られてるのが惜しいというかもったいないなくらいの感想は、当時ではないにしろ09年までには固まっていたと思いたい。ワシを殴れのシーンは一応あるんですけど、あそこのいいところって帰るってなってるシンジを止めずに送り出せるところ、その上で貸し借りなしにしようと殴られることを提案するトウジじゃないですか。それ抜きでワシを殴れ、されてもなんかいい印象は残んないですよね。特にケンスケは第四話のケンスケキャンプがまるごと削られたせいで嫌な奴っぽい印象のほうが強いですよね。これは見返して固まった感想です。ただそういうところはあれど、次回予告を含めてなるほどどんどん変わっていくんだなという期待の大きさは絶対にありました。ここまで続くとは思ってなかったけど。

この後も折りに触れ何度か見返したんですが、その後に比べて順当なリメイクという印象の強い作品でどういう理由にしろあまり話題に登りづらい感じはします。2020年に見返すとびっくりするくらい古びて見えたんですが、1995年の作品を2007年にリメイクしたものを2020年に見たら古びるも何も事実として古い作品なわけで、長いスパンで作品を追うと見え方が見る度に変わっていくということを実感したりもしました。

あとは音楽についてちょっと喋りたいです。Angel of Doomのくだりは新劇場版お約束の既存盛り上げ曲→新規盛り上げ曲がめちゃくちゃ決まった名シーンなのはもちろんなんですが、シンジが乗れハラ(エヴァに乗れハラスメント)されてる時のピアノ曲がめちゃくちゃよくて、しかもタイトルが“I'll go on lovin' someone else”なんですよ。エバゲリでそんなタイトルの曲出たらそれってもう答えじゃないですか、というのは14年後に示されたとおり。