210906

 文庫の創刊の辞で有名なものといえばおそらく角川文庫の「第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い文化力の敗退であった。」だと思っていて、実際にこうして抜き出してみても書き出しとしてとても上手なのがわかる。そしてこれと同じくらいいい文章なのが電撃文庫の創刊の辞で、単によく読んでいたからというだけではあるのだけどその贔屓目を差し引いても読ませる文章だと思う。二段落目のレクラム文庫・ペンギンブックスあたりで盛り上がりの波がうねり、アイ・オープナーたりたいのあたりで一回サビが来て、<Changing Time,Changing Publishing>で完全に最強になる。電撃文庫を読み漁った人間はある程度暗唱できると思うのだけど、やっぱりいちばんの盛り上がりどころは<Changing Time,Changing Publishing>ですよね。その直前のしかし、もいい味を出していて何度読んでもくせになる名文です。とまあ、何かを始めるということはそれだけ志なり狙いなり企みなりがあったりして、それはそこから何をするにしても通しておくべき筋だったり背骨だったりするのだけど、そんな立派でなくてもリハビリがてらなにかしら人に読まれることを前提とした文章を書くという作業を続ける場所があればなんとかなるんじゃないかというのがこのブログにおける創ブの辞です。

 というのも今年に入ってから新しい文章が一切書けていなくて、理由は自分で把握できているつもりではあるものの簡単に片付くものではなさそうだし、そもそも自分の把握が正しいかどうかもわからない。そういった葛藤を言語化することを表沙汰にしようとは思えない、それはそれとして書くということをとりあえず保っていきたい。ただ実際それもあやふやで、本当に自分は書くという行為に何かしら執着があるのか、だって手書きキーボード問わず一文字も書かない日なんかざらにあるわけです。書くのをやめたところで大したことでなし、もちろん自分にとっては大きいことだけどその大きさに陶酔してしまえば何もかもクソなので黙ってやめるに越したことはない。なので別に定期的に更新したりする気もないし飽きたらやめるし放置するし消します。タイトルは上遠野浩平機械仕掛けの蛇奇遣い』から。